ゲーム「原罪の教室(旧題:牝奴隷)」 感想

そんなわけで。しばらく前にやった、アトリエかぐやの学園破戒AVG「原罪の教室」の感想を書く。
これはいわゆる黒箱・陵辱系作品なんだけど、僕の中では姉ゲーとして強く印象に残っている。
内容は、主人公の高宮遼が姉(作中では一応義姉という体だが本来的には実姉)の高宮紗月から依頼され、学園の女学生や女教師を調教し破滅させていくというもの。メインヒロインである神崎明日香(学生自治会の会長)・森野みなと(チアリーディング部の幼なじみ)・長谷部留美(遼のクラス担任)の三人を攻略し終えると、紗月ルートが開放される。明日香・紗月ルートでシナリオ分岐があり、ハーレムエンドも存在する。

明日香・みなと・留美

ヒロインは総じていい役者を揃えている。明日香は一色ヒカルが完璧にハマっていて大変よい。みなとは青川ナガレのみるみるボイスが嗜虐心をそそるし、留美飯田空が優しく教え子想いな先生を好演している。
攻略した順番は留美→みなと→明日香。各ヒロインにふさわしい堕とし方をしているから、ゲームの進行に説得力がある。ただ、この娘たちは遼に対してわりと好感を持っているから、「心の底から嫌がる女の子を無理矢理……」といった醍醐味はない。むしろ好きでいてくれた人を壊してしまう罪悪感の方が香り立っている。
そして、どのヒロインを攻略するに際しても遼は紗月のことを常に意識している。

紗月

爛れた関係の姉弟っていいよね。榎津まおの声は蠱惑的で謎めいた紗月の雰囲気を上手く表現していた。
姉の魅力は弟によって発見され語られる。遼は筋金入りの弟だから、紗月への視線が愛に溢れていて快く共感できる。ただ、姉への感情は純粋な愛だけではなく、屈託のある想いもこもっていて複雑なところがある。
とにかく遼は弟力が高い。風呂場に残された紗月姉さんの髪の毛一本で股間を元気にさせ、手にとって「ああ、姉さんの匂いだ……」とか言い出す彼に戦慄を覚えた。留美ルートでは留美を紗月に見立てて抱き、その行動に自ら動揺する場面があり、紗月に対する入り組んだ気持ちが見て取れる。みなとルートではみなとが紗月と自身を比べることすらおこがましいと内心でマジギレするあたり、真性である。
書き留めておかなければならないのは、遼は紗月との"一度壊れてしまった、いびつなままのカタチをこそ失いたくな"いと当初は考えていたことだ。
紗月の方も遼を深く愛してはいるが、最奥まで心を開いてくれず関係の決定的な進展は避ける遼に思うところがあり、とある計画を発動させていく。その過程に明日香たちの牝奴隷化があるわけだ。計画が完全に果たされた時、現状維持を志向していた遼はどのように心境を変化させるか、というところが見どころである。
紗月が箱舟計画を実行する原因となった出来事は、ゲームの中盤からほぼ明らかになっている。まず、遼に襲われて性的関係を持ってしまったこと。*1そして、遼との関係を世界(社会)に認められなかったことだ。遼と愛しあうことを赦し祝福してくれるような世界を作る、という紗月の理想はおぞましくも哀しい。
箱舟計画の一環として、学園行事・辰陵祭を性の狂宴にしてしまい、紗月と遼が見学していくシーンが気に入った。性倫理が僕達のそれとはかけ離れた世界、といえば例えばsofthouse-seal作品が思い浮かぶが、ああいった性の楽園を人の手で作ろうとすると地獄が現れるよ、という話として読める。紗月と遼もseal的世界の下に生まれていれば業を深めないで済んだのにね……紗月個人陵辱ルートのクライマックスで、方舟の者たちから祝福されて紗月が喜ぶシーンはほろりときた。
プレイした時期はまだ「雫」の記憶が新しく、紗月を見ていると月島兄を思い出していた。彼女はあの人ほど自暴自棄にはなっていないものの、近親相姦を原因としてめちゃくちゃに性が乱れた世界を作り出すという点が共通している。
紗月個人恋愛ルート(と個人陵辱ルート輪姦END)では、正常位という体位に特別な意味を持たせ、普段は避けてきたその体位を再現することで姉弟の関係を決定づける役割を与えられているところに感心した。
実は初めて近親相姦した日のことをトラウマにしてしまっているのは遼の方なのだが、さすが黒箱系エロゲ、トラウマは初めてと同じ場所・同じ体位でセックスすることで治療するというメソッドを示してくれている。これが情感豊かでいいシーンなんだよね。

――そうか……あの日のことを辛い想い出にする……そのことが、姉さんにとっては辛いことだったんだ……。
(「初デート〜紗月が抱き続けた思い」)

わだかまりを捨ててあの日を再演し、絆を結び直す姉弟の姿が印象深い。
遼にお願いしていつもの「姉さん」ではなく「お姉ちゃん」と呼んでもらい、それだけで絶頂する紗月。どれだけ弟好きな姉なんだよいい加減にしろ。
ただ、一つ気にかかったのは遼が終盤に"『姉さん』とは呼んでるけど……俺にとって姉さんは『紗月』という一人の女性だよ"という発言をしている点。これは最後まで姉弟関係を貫いて欲しい(または恋人かつ姉弟という関係に落ち着いて欲しい)と願う派閥の姉萌え勢からすると看過できない発言だ。
しかしどうだろう。遼は本当に紗月のことを『姉さん』として見たことが一度もなかったのか? どうも彼の語りからはそう思えない。やはり、仮初とはいえ人間は使った言葉に引きずられるところがあると僕は考える。もし遼の言うとおりなら、プレイヤー以外誰も覗かないモノローグで『姉さん』と紗月を呼ぶのは少し不自然ではないかな。
ということで、「遼は口では紗月のことを女性としてしか見たことがないと言いつつ、心のどこかでは姉として見ている部分もある」説に一票入れておく。
発売当時の姉好きユーザーのリアクションは以下のリンクから見ることができる。
年上系ヒロインまとめサイト - 姉ゲームまとめ 牝奴隷 〜犯された放課後〜
本作に加えて、別ラインながら「姉汁」も出している2005年のアトリエかぐやは素晴らしい姉ゲーメーカーだったんだな、ということを再確認した。
原罪の教室 KAGUYAコレクション[アダルト]
原罪の教室 KAGUYAコレクション [アダルト]

*1:幼い紗月がものすごくかわいい。