ゲーム「うさみみデリバリーズ!!」感想

うさみみに意味はない

そんなわけで。すたじおみりすの燃える青春お届けラブエロ萌えコメADV「うさみみデリバリーズ!!」を終えたので感想を書く。
賑やかで楽しげで、惚れ甲斐のある女の子に溢れたいいゲームだった。そしてまたも(個人的に「Treating2U」以来の)主人公好青年ゲー。
いきなりヒロインたちについて。可憐ちゃんが非常に捨てがたいんだけど、一番好きなのは莉央姫さんかな。誠実で「いい女」なんだよね。おたまとねこのデレも破壊力がマジパない。べるのは癒やし(北都南さんがナイスキャスト)。
総じてヒロインは魅力的なんだけど、まずその魅力を見つけることができる主人公・Q太郎の視座が素晴らしいと思った。この娘はこういうところがいいんだ、というモノローグにいちいち頷ける。
本編はゲーム内時間で数日のできごとなんだけど、攻略進めるとその数日で各ヒロインのことが好きになっていて不思議、というよくあるエロゲワンダーを味わった。共通部分が多いから、各ヒロイン固有のパートってそんなに長くないのにね。2010年代の白箱系エロゲだとわりと意識されているであろう「くっついた後のイチャラブ期間」も全然ないし。
それでもゲーム中にヒロインに対する好感度がどんどん上がっていくのは、やっぱり随所に見えるエロゲ作りの巧さによるものだと思う。
全体的にテキストの練度が高い。台詞に「…………」みたいな沈黙が多いんだけど、それがいい間の使い方になっていたりする。カットイン等の画面を面白くする小技もえらく効いていて、約10年前当時のゲームは「姉しよ」「C†C」とか以外ほぼ全然知らないけど、多分当時の業界標準から見て上の方だったのではないかと勘ぐる。イベント画はそこそこで、時折エロかった。音楽も慣れ親しむほどに心地よく感じられた。

浮島の一番熱い夏

ゲーム全体の印象としては、僕はどこかつかみどころがなく、またそれが好ましくもあると感じた。キャラクターが背負った周辺的な設定とかバックグラウンドとかはけっこう広大なんだけれど、このゲームはそれらをあえて書ききらなかった。各ルートで語り残したものがまとめて語られるグランドエンドが、ありそうでない。何か大きなものから、ぽっかりと切り離されたものに触っているような感触がする。
それは、地理的に日本本土から離れた浮島という舞台のせいでもある。仮に本土や外国とそこに住む人々にまつわる情報がなければ、浮島はあまりにも外界から隔絶されすぎ、眺めていて現実感を喪失しそうになるだろう。適度な情報量によって、地続きならぬ海続きになんとなく外の世界がぼんやりと感じられるようになっている(ねこ・紀里亜)。
また、折しも作中の季節は夏、それもお盆に差し掛かる時期である。どことなくこの世と別の世界の境界すらもぼやけ、普段は見えないものがぼんやりと見えてくる(みちる・莉央)。
この、どこからも近くなく遠くなく在るという浮島の存在感がなんだか好きになった。そこで懸命に生きてみたり(おたま・SS)、そこから昇る宇宙に思いを馳せてみたり(べるの)、どこからも距離を置いているが故にどこをも志向できるという自由さがある。*1
お話単体で見ると、べるのルートが味わい深い。テックが(本来の設計意図とは異なる形であれ)人を幸福にすることを祈らずにはいられない。
みちるルートも、彼女が言う「わからないことをわかること」がなんだかしっくりきて、わけがわからないままに情が移ったし、たとえ彼女が観るビジョンを共有できなくても、ただ抱きしめたいなと思う。

デリバリストよ永遠に

そんなわけで、おすすめされて始めた「うさみみデリバリーズ!!」は面白かった。初みりすだったけど、つかみはOK。インストール済みの「SinsAbell」はいずれまたということで。
うさみみデリバリーズ!![アダルト]
うさみみデリバリーズ!! [アダルト]

*1:ところで、軌道エレベーターがこの作品をSFファンに紹介するためのアドバルーン的に使われてるようだけど、実際のところ新船橋市の生活描写のディティール自体が既に十分すぎるほどSFだよね。