小説「武士道エイティーン」 感想

そんなわけで。誉田哲也「武士道エイティーン」の感想。ネタバレはほぼなし。今回は簡潔にいこう。
以下の著者インタビューを読んでおくと理解が深まるかもしれない。
武士道女子高生の最後の夏 誉田哲也 文藝春秋|雑誌|本の話|PICK UP

武士道エイティーン 構成

本作も前二作と同様、磯山香織、甲本早苗の二人の視点を交互に描いていく構成となっている。さらに、西荻緑子、桐谷玄明、吉野正治、田原美緒のショートストーリーが随所に挿入されている。
また、例によって、剣道のたすきを連想させる紅白二本のしおりが付いている。香織サイドでは赤を、早苗サイドでは白のしおりを使うと、制作者の想定したイメージが読み手にも想起されるだろう。

三部作最終作品

最初に本作の感想を書いておくと、とても面白かった。三部作の中でも一番だ。まさに完結編の面白さ、ということだろうなあ。
本作にて武士道シリーズ三部作は完結する。前二作において、香織と早苗の間の絆や、剣道、武士道の意義ということについては語り尽くされた感がある。主要なキャラも既に出きっている。
そうやって前二作に支えられている分、本作では、シックスティーン、セブンティーンよりもエンターテイメントを描くことに注力できているように思う。

ショートストーリー

4人の短編の中には、けっこう重い話もあったりする。でもそのおかげで、読み応えある小説に仕上がっている。
特に印象深かったのはやはり桐谷玄明の話かな。さすがに人生長く生きてるといろんなことがある。ヘヴィな話ではあるけれど、それだけに読後感をしっかりと受け止めようという気になる。

本編

高三時代の香織と早苗の剣道、試合、そして進路選択が描かれる。それらにしっかりと決着をつけつつ、物語が終わる寂しさ以上の爽やかさを感じさせるグッドエンドだった。あと香織の凛々デレがいいね。

三部作まとめての評価でなら、十分に名作と言える。現代剣道小説が読みたい人には是非おすすめする。
本作を読んで、ティーンズである彼女ら(あるいは、かつてティーンズであった彼ら)の若さを分けてもらったように感じる。剣道を、武士道を、未来を、人生を歩んでいくことを、彼女たちのような目で見つめることができたらいいな。そう思う。
そしてまた、剣道がしたくなった。僕も武士道の上を歩いていたいから。

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