ゲーム「真剣で私に恋しなさい!A-4」感想

そんなわけで。みなとそふとの武士娘恋愛ADV「真剣で私に恋しなさい!A-4」をプレイした。やっぱり「まじこい」は楽しいね(いつもの)。
今回のヒロインは二人とも「まじこいS」からの新規キャラである林冲と大友焔。性格的にはどちらもいい娘で大人しめなんだけど、それは地味めということでもあるし、なんといっても今作はAシリーズの中で唯一ヒロインの数が三人に満たないから、パワー不足なのではないかと心配していた。
やってみると、実際ド派手さや血が滾るような熱さとかはないものの、賑やかな掛け合いを中心とした日常と大和とヒロインの優しく爽やかな触れ合いは健在で、こういう落ち着いた作風も「まじこい」のスタイルの一つだよなと思った。
今回はヒロインが西方勢と中国勢であるためか、「A-3」までに比べると九鬼家の描写は影を潜めていた。風間ファミリーの出張りはそこそこあって、焔ルートでは西方十勇士と風間ファミリーの交流が日常になるし、林冲ルートでは京やクリスの武士娘らしいところを再び見ることができた。お約束の京エンドもあって、今回はなるほどそう来たかという流れからしっかりと一枚絵のHシーンもあって充実していた。愛されてるなあ。
以下、ヒロインごとに。

大友焔

冒頭のライター(マッチか?)の火が灯る演出かっけー、などと思いつつ十勇士結成シーンを進める。タカヒロさんの忍殺ネタも板についてきた感あるね。
大和が東西交流戦できっかけを作っておいた焔と、天神館と川神学園の交換留学を機に接近していく筋立て。風間ファミリーは各個に西方十勇士の面々と仲良くなっていく。このへん、いつもと違うメンバー間の掛け合いが新鮮で面白かった。京は(無印のクリスに対してそうだったように)意外な人と親しくなるところが興味深い。メダルを集めていく演出は「ポケモン」感があった。ああいうカットイン演出にも手を抜かないところがみなとそふとらしい。ファミリーの女子五人に天神館の制服を着せるのはいいサービスシーンだった。
選択肢によって尼子晴とのHシーン・エンドがあり、これはサプライズだった。まじこいもAシリーズが最後ということで、悔いのないよう少しでもフラグが立ちそうな女子にはイベントを作っておこうということか。
本筋の焔ルートは彼女の花火修行をサポートするという大和らしい役回りをこなしつつ、穏やかに恋愛を発展させていく健康的なシナリオ。
花火、というところでまず「姉、ちゃんとしようよっ!2」が思い出される。「姉しよ2」ではいくつかのシナリオのクライマックスで花火が打ち上がるシーンがあり、例えば犬神歩笑ルートだと彼女と夜の海岸にいるシーンで立ち絵の背景として夜空に花火が打ち上がる様子が動的に演出される。今見返すと、ただでさえ小さい画面サイズのさらに小さい部分で咲く花火はささやかなものだったけれど、あれはあれで情緒があった。
この情緒というのが厄介で、焔はそれを上手く表現できず花火製作に行き詰まってしまう。大和が仕事として依頼したことで成果を出さないわけにはいかなくなり……というわけで悩みながらも根性見せて職人としてランクアップしようと頑張る焔は偉い。彼女は気骨と愛らしさを魅力として兼ね備えた、武士娘らしい武士娘と言える。触れ合う人を元気にするパワーを持っているところは一子にも似ていて好ましい。
話が進む中でさらっと触れられるに留まる焔のトラウマがあったけれど、あのあたりの処理がまた非常にタカヒロさんらしく、氏のシナリオの温かみを再確認できた。類型としては「つよきす」の鉄乙女さんのトラウマに近いものがあるか。乙女さんの「雷が怖い」に対して焔の場合は「闇が怖い」という心の傷を持っており、これは自身の過失の罰として家の土蔵に閉じ込められた過去から来ている。
この挿話におけるポイントは、焔が彼女を土蔵に閉じ込めた家族には(いけないことをしたと気付かせてくれて)むしろ感謝していて、トラウマにまつわるエピソードは既に終わっており、ただ後遺症的な患いがそこにあるということ。つまりトラウマの原因を遡りメスを入れることで治癒的な解決を目指す、ということは作中では推奨されていない。替わりに、タカヒロ作品では、乙女さんに対馬レオがそうしたように、往々にして「ただ側にいる」ということの大切さが描かれる。停電した教室の中で、大和も焔のために携帯電話の灯りをともして、彼女の側にいる。

【焔】「暗いのが苦手になってな」
【大和】「…でも閉じ込められた時は一人だったんでしょ」
【焔】「あぁ? そうだが」
【大和】「今は俺がいるから平気だね」
【焔】「あ、あぁ」
【焔】(人がいても、怖い物は怖いが…)
【焔】(ただ、励ましてくれてると思うと嬉しいな…)

"怖い物は怖い"、つまりトラウマは解決されておらず、依然として・この先も焔に付き纏う。けれど患いが完全に癒えなくても人はそのまま生きていけるし、支えてくれる人が現れればその歩みは一層確かさを増す。これはトラウマの程度の問題ではなく(「闇が怖い」程度の軽い症状だからではなく)、作中における人間観の問題としてそうなっている。
さて、花火製作の方は紆余曲折の末、焔が大和と見て楽しいと思える花火を作ったところ、家族からも認められて一段落。それをきっかけに大和と焔の交際がスタートする。付き合いだしてからは順風満帆に関係を発展させていき、Hもしつつ二人は恋人として充実した日々を送る。イイハナシダナー。水着Hシーンで大和を見上げる焔の目付きはゾクゾクするね。あとこの娘も京や小雪と同じく精液で強くなる属性持ちだったか……
交換留学も終盤になり、風間ファミリーそれぞれが十勇士から友好の証としてメダルをもらっていく。なかでもキャップがメダルのお返しとしてバンダナを石田に渡したのは印象深い。内申点を犠牲にしてまで普段から着用している一品だけに、キャップの真剣さが伝わる。
しかしこれからは二人遠距離恋愛かー、と思っていたら今度は焔が留学してくるというお約束のオチも決まり、焔ルート完。九州で繰り広げられた「まじこい」も新鮮でよかった。以下小ネタなどについて。

  • 一子、勇往邁進を「ユオマ」と略していたが今回は「ユーマ」。もう好きに呼ぶといいよ
  • "口の中が花火状態"という比喩、これからコーラ・炭酸飲む度に思い出す
  • 百代のプロレス的な戦い方にしっかりナベシマンが教育的指導入れたのはよかった
  • 丸戸・るーす・王・ロミオと激しい身内ライターいじりネタに"最後の太陽族"(二つ名)丸戸史明も苦笑い(しているかどうかは知らない)
  • 珍しく真剣に交際を申し込んで真剣にフラれるヒゲ先生だ

林冲

まじこい九州編につづいてまじこい中国(チャイナ)編……というほど中国舞台にはならないんだけど、海の向こうからお客さんがやってくる。
今回はが曹一族に接触し、梁山泊で"盧俊義"にあたる武士娘管理能力者の資質を持つと目される直江大和の存在を教えるところから始まった。曹一族の師範代・史文恭と梁山泊林冲をはじめとした面々が大和の争奪戦を繰り広げる、というのがストーリーの軸。序盤からどどーんと林冲・揚志・史進・武松・公孫勝が川神学園に転入してくる流れ、もう慣れたとはいえインパクトあった。
大和に対して出会い頭から過剰な親愛をもってよろしくしてくる林冲に京が待ったをかける。"目の前で旦那に粉かけられて黙ってるほど、ぬるい人間になった覚えはない"という京の熱いところが見られてよかった。事情により史進と決闘することになった京、そしてクリスだが敗北し入院することに。
林冲たちの転校初日深夜、寮の自室に史文恭さんがダイレクトアタック、林冲と一戦交えて退いていく。相手のヤバさを理解した大和は林冲の提案を受け入れ、彼女に護衛してもらうことになる。風間ファミリーにも口外できないが、そこはさすがにファミリーの面々、なんとなく察してはくれている様子でありがたい。
一方、武松は公孫勝を助けて武蔵小杉を処理したのち、川神院で門下生相手に難なく勝利し、川神院は梁山泊と合同稽古するにあたっては全体的なレベル不足であると残念がる。このあたりで梁山泊勢の強さと川神勢に対するライバル感を出しているんだけど、あまりヘイトを稼がせず憎まれ役にしすぎないような配慮もある。史進が入院した京・クリスを気遣う素振りを見せていたり。「まじこいS」以降タカヒロさんはそういうところに気を使っている印象がある。
梁山泊勢は護衛に伴うもう一つの重大案件、大和の盧俊義としての資質を見定めるフェイズに入っていく。大和も彼女たちの視線に何かを感じ探りを入れようとする。林冲以外のメンバーとも仲良くなるフェイズが始まる。
初手はちょろそうな公孫勝、大和や弁慶が所属するだらけ部との相性もばっちり。武松は甘い物を持ち寄り何度もトライする力押し、そうして二人との仲を深めていく様を見て揚志も大和を認めていき……史進はあまり描写がなかった。公孫勝から聞き出した盧俊義の件について、大和なりに前向きに検討し、梁山泊勢に認められることを一つの目標にして立ちまわる。ここはいつもの「まじこい」テイストだった。
林冲の学園生活、学生は本業ではないからそこまで乗り気ではないけど、根が善良だからか義経なんかとは相性がいいみたいで微笑ましい。大和が梁山泊メンバーと交流する中で、やっぱり一番に仲良くなりたいのは彼女というわけで、一緒に遊んだり七浜でデートしたりとステップを踏み、ついには林冲の方から大和にキスするところまで高まってしまう。
そこで選択肢が二つ出てくる。本格的に梁山泊入りし全員の"盧俊義"になり林冲ただ一人のための男ではなくなる道と、あくまで林冲との関係を深めていく道。
前者を選ぶと梁山泊ルートに入り、公孫勝・武松との3Pを経て梁山泊入りし盧俊義となった大和の将来が描かれる。なんと大和を追って京も梁山泊花栄の名を継ぐというサプライズがあり嬉しい。大人になった京はいっそう妖艶になっていてHシーンも非常によい。幸せの青い鳥の囀る一つの未来がかいま見られた。
後者の選択肢が林冲ルート本筋となる。林冲と改めて契約し、性的なことも始めていく。美しい髪を巻きつけたフェラとかいけない。
仲が深まったところで、林冲の「守る」ということに対する重すぎる感情がついに暴走し始める。目からハイライトが消え、大和を気絶させて川神から離れたとある山中の山小屋へ運んでしまう。これは「君が主で執事が俺で南斗星ルートのリメイク感があった。南斗星さんも「守る」想いにセーブができず夢と練をさらって山中にこもっていた。七浜デートの際、林冲南斗星さんと朱子らしきペアを目撃して南斗星さんの方に言及するくだりもあったし、かつて誰かを守れなかった過去を持つ似た者同士の縁があるということか。南斗星ルートは当時の逼迫した製作状況のせいかシナリオもやや雑であまり出来はよくなかったけれど*1、今回林冲ルートで同種の展開をやっている以上、南斗星ルートよりも丁寧に展開してくれることを期待した。
そこはさすがの直江大和、山中に軟禁されても逃げ出すことは考えず、まずはゆっくりと林冲の過去について聞き取る。友人ルオの死と彼女から異能を持つ眼を移植された話を聞き、そんな過去のせいで時折行き過ぎた守衛に走ってしまう林冲のことを受け止めなおかつリードすることを決意する。主人公らしくてかっこよい。
邪魔も入らない環境もあって二人は身体でも結ばれる。林冲の黒い下着は素晴らしい。数々のHシーンはほぼ連続して繰り広げられるんだけど、それぞれの尺がいまいち短いのが難点だった。まあだらだらやっても仕方ないのかもしれないが……wagiさんの絵は非常に扇情的なだけに惜しく思う。
ともかく共同生活で男としてのアピールにも成功し、夏休みの終了とともに川神へ帰ることにする大和とそれに従う林冲だったが、そこに史文恭が強襲する。ようやくの本格異能バトル展開だ。龍眼の史文恭と予知の目の林冲が激突し、一枚上手を取った林冲が勝ちを収めたところにヘルモーズなる傭兵集団がに唆され漁夫の利を得にやって来る……も、気絶したふりをしていた史文恭と林冲の共闘により返り討ちにあう(その後、武松と史文恭の梁山泊・曹一族合同部隊で本拠地まで壊滅するインガオホー)。……一体何者なんだ……という謎を残し、今回の直江大和・盧俊義争奪戦は終息した。という流れ自体は別によかったんだけど、史文恭さんの出番は少なかった上に林冲とは1ラウンド敗け、続くラウンドはご破算になってしまったのがちょっと残念だった。本気の本気バトルが見られなかった不完全燃焼感がくすぶる。
さて、舞台は川神に戻り、武松が川神院門下生にリベンジされて見直したり、史進が京・クリスと再決闘して敗けたり、公孫勝が紋様ちゃんと親しくなったりと、梁山泊勢の面々が川神に溶け込んでいく。そして大和の側には林冲がいて、いつも見守ってくれる――という円満なエンディング。あらゆる者を受け入れていく川神、恐ろしく不思議な街だ……
林冲ルートは、上述のようなバトルの不完全燃焼感以外は概ねよかった。バトルもある程度京・クリスの史進リベンジ戦で満足したし。あとは、新しい面子と既存の面子が掛け合いすると新しい面白さがあるというのは焔ルートと共通していた。以下小ネタなど。

  • 超武道伝2懐かしい。ボージャックとかも出てるんだよね
  • 「唐衣花のたもとにぬぎかへよ我こそ春の色はたちつれ」
  • 今は川神にいるのが楽しくて仕方ないという冬馬、しみじみする
  • 公孫勝の「明日から真剣」Tシャツ、よい

  • 次回予告
    • 義経の可愛らしさと凛々しさ両面が発揮されるのが楽しみ
    • マルさんはエロエロなのは嬉しいけどそれだけじゃねーかという「まじこいS」ユーザーの声にどう応えるのかが楽しみ
    • 天衣さんはいきなり遭難から始まるらしいが、幸せになるといいね
    • 天衣ルートで案件がもし片付くのなら、「まじこいA」パッケージ版にグランドルートはないのかも?
  • チュートリアル18回目、やったねムサコッス、仲間が増えたよ!
    • BGM「君のヒーローになるために」がこのシーン上でも音楽モードでも再生されない不具合があり、みなとそふとにメールフォームから報告したんだけど2014-12-07の時点で返信がなく、公式サイトでの公表もない。2014-12-06の時点で返信が返ってきて、添付されていた修正ファイルを当てたら不具合は解消した。メールを見落としていて申し訳ない。知人も同様にこの曲が鳴らないらしく、bbspinkでも何件か報告されているので自分の環境固有の問題ではないっぽい。プレイ済みの人は音楽モードで確認後みなとそふとに報告したりしてみては
  • 新規BGMは「108の魔星」がかっこよかった
  • 掛け合いモード
    • 本編で出番があまりなかった分、史文恭さん系のネタが多めか。タカヒロさんも史文恭の役者さんはかなり好きなようだし
    • 結城友奈は勇者である」ネタで燕先輩がにぼっしーと化していた
  • 「まじこいA」シリーズも次回で最後、発売は来年7月くらいかなー。備えよう

まとめ

元気っ娘の焔といじられお姉さん林冲、どちらもタカヒロテイストがあって、5年以上ファンやってる身としては安心感があった。ヒロイン二人で落ち着いた作風だったので印象としては「まじこいA」の中でも地味な方だけど、次はシリーズの締めとしてド派手にやってくれてもいいのよ? 楽しみにしている。

*1:ユーザーの評価を受けてか、コンシューマ版で加筆修正されている。