ゲーム「relations sister×sister.」 感想

1

そんなわけで。新規メーカーAileのデビュー作「relations sister×sister.」をプレイした。
かみやまねきさんのイラストに惹かれて買ってみた本作だけど、率直に言って驚いた。美少女ゲームにおいて絵にできること、絵が果たせる役割はまだまだたくさんあるのだと知った。
このゲームのイベントCGには、光あるいは水を思わせる白い飛沫が散らされた絵が多い。「キラキラしてる」と形容する時の「キラキラ」にあたるものだ。それが、キャラクターをよりいっそう魅力的に輝かせている。のみならず、世界観をも備えているところが素晴らしい。その目は、キャラクターたちと彼らが存在する世界が最も美しく光輝を放つ瞬間を、一枚の絵として切り取ることに成功している。おそらく、かみやまねきさんという原画家でなければこのような世界の観方は提示し得ない。*1煌きを捉えた視点を借り受けた時、僕はこの世界で本当に光の粒が舞っているんだろうな、と思える。
ヒロインの絵については、「ひたすらかわいく描こう」という信念のようなものが伝わってきて温かい気持ちになる。以前、知人が「女の子を描く時は『かわいくなれ』とひたすら思いながら描いてる」みたいなことを言っていたけれど、まさにそんな感じがする。"2次元の女の子の瞳はガラスでできている!…とイメージして塗っています"、*2"絵を描く原動力は、やはり『可愛い!』と言う気持ちです"、*3というかみやまねきさんの言葉からは、氏の美少女に対する意識の一端をつかむことができる。
具体的な原画の特徴としては、前述の飛沫に加えて髪の光沢、フリルがあしらわれた服などが挙げられる。さらに、玉のような汗や目尻に浮かんだ涙といった水の質感も特筆に値する。
イベントCGに比べると、本作の立ち絵は文字通り精彩を欠いたように思えてしまう。顔がやや太めに見えることが原因だろうか。ただ、静の立ち絵はその真剣な顔つきが彼女の切実さを表しているように思えてよかった。
ふさわしい背景画像が用意されず、青空を背景にして立ち絵を登場させているシーンがあったのは少し残念。

2

relations sister×sister.」というタイトルのわりにはあまりシスターシスターしてなかったように思う。香織と千里の姉妹はかわいいし、特に香織はどのルートでも浩平に対する気の使いようが上手で、いいお姉ちゃんだったけれど。春佳、美沙、静の三人が共通ルートであまりにめんどくさい女の子っぷりを発揮してくれたおかげで、姉妹の印象が薄くなってしまった。
補足しておくと、母の死をきっかけとして恋愛というものを遠ざけるように生きてきた浩平が、二人の義姉妹との出会いをきっかけとして周囲の女子とrelationを結んでいく、という意味ではしっかりタイトル通りの内容だった。

3

静 Genius Girl

本作で一番好きになったヒロイン。窓際読書少女は読む本も種々雑多で興味をひかれる。彼女がおすすめする本は実際にGoogleで調べたりした。共通ルートではめんどくさいバイト仲間その1兼クラスメイトとして猛威を振るったものの、個別に入ると少し自重して恋愛していたように思う。
「浩平に言うおやすみなさいが、一番好き!」 浩平に恋する気持ちによって自分のことをも好きになれそうな予感がして勇気づけられるという、素敵な言葉だ。楓とのことで心が揺らいでいる時だからこそ、一層価値がある。大事なことなので告白の場面でもう一回言ってるしね。
静と楓の関係については、「俺に姉妹間のディスコミュニケーションを見せ続けると死ぬ」というフレーズを持って感想に代えさせていただく。香織・千里よりも静・楓の姉妹丼が欲しい、と思うくらい少ない出番で楓は魅せてくれた。
静の一枚絵では、放課後の教室でウエイトレス制服をたくし上げているものがベスト。これまで見てきたスカートたくし上げの中でも確実に五指に入る美しさだった。フリフリした下着、前から見えるお尻、スカートのレース、赤らんだ頬、どこをとっても最高にかわいい。
あと、静の魅力はお腹だということは強く言っておきたい。たくし上げの差分を始め、全てのシーン回想で彼女の下腹部が露わになるんだけど、それがとても白くて綺麗で撫でたくなる。
キャストの大花どんさんの名前は覚えておくことにする。

美沙 Elegant Girl

めんどくさいバイト仲間その2。バイトの描写を読んでると「トマト缶の仕分け」がゲシュタルト崩壊する。
共通ルートでの振る舞いは難ありだったけど、この娘は不意に距離を詰めてきたり急に素直になったりして、めまぐるしく変わっていく表情を見るのは楽しかった。木村あやかさんの声を久しぶりに聴いたかも。
一枚絵表情差分のだらしない口の形がとてもよい。ぐにゃーっとしたの。調べてみたところ、ゆるみ口orトロ顔と呼ぶらしい。
そういえば、浩平と美沙が電話で「麦茶とめんつゆを間違えた」という話をして盛り上がっていたけど、あのトラップには僕も何度となく引っかかっているので心の底から頷いていた。

春佳 Childhood Friend Girl

めんどくさい女の子その3。共通ルートだけでなく、個別に入ってからも「私のことが好きなら今のこの場で(放課後の教室で)私を抱けるはず」とか、めんどくさいヒロインオブジイヤー2011にノミネートできるレベル。一枚絵だとかわいいんだけどね。立ち絵で憎まれ口叩かれるとどうしても神経が昂ぶってしまって…… それはそうと、このルートで失恋する静の姿が切ない。
終盤の本物・偽物といった問題意識は、まあこのボリュームで扱いきれるテーマじゃなかったけど、彼女なりに精一杯やってる感じはした。目の前にあるものや今ここにいる自分は、嘘でも偽物でもない。率直で誠実な言葉だけが、私とあなたを繋いでくれる。そんなお話。
美沙ルートに続いて、テキストで耳たぶ愛撫の描写があるのにCGでは耳が描かれていなかったため、僕は深い悲しみに包まれた。

千里 Princess Girl

非エッチ三原則とかしゃらくさいことを言ってのけるお嬢ちゃん。優しさを、自分の心を楽にするためでなく相手の心を安らげるために使える人へ成長していく彼女を見届けるのは、お兄ちゃんとお姉ちゃんの役目。
この娘も一枚絵になるとかわいさ10倍増しになる。香織と違って全体的に活躍の場が少なかったことが惜しまれる。

香織 Adored Girl

テーマBGMの曲名からも分かる通り、情が深くよいお姉ちゃんだった。人を思いやる気持ちと自分の夢とを秤にかけて悩むところは、千里と対照的であると言えなくもない。
ビジュアル的にも静と一二を争うくらい気に入った。静ほどのインパクトはなかったけれど、香織のたくし上げもなかなか効く。
修学旅行パートがカットされている件は、香織ルート一つくらいなら「旅行シーンを飛ばすことでテンポを上げた」もしくは「出発から1クリックで帰宅するというネタ」というフォローもできるんだけど、全ルートでやられるとさすがに無理。そりゃレビュアーから総ツッコミもされるよね。旅行先の背景画像が用意できなかったんだな、とか余計で身も蓋もない推測をさせるだけなんで、いっそ言及せずにエピローグで時間を一年くらい飛ばすルートがあってもよかったのでは。

4

原画買いだったので、期待以上に絵がよかったことにはとても満足している。一つ気になるのは、デモムービーでちらっと見えたけど本編に入っていない、香織さんがウエイトレスになっているCGはどこで見られるのかということ。雑誌等に載った版権絵だったのかな。
BGMでは、OP主題歌のピアノインスト「LOVE HEART(one piece)」の耳触りがよかった。
Aileの次回作は、原画家が同じかみやまねきさんならワンチャン購入まである。

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