ゲーム「Friends」 感想

そんなわけで。Aileのゲーム「Friends」をプレイした。プロダクト(製品)としては完成度が低く、素材不足やそれを補う力量不足が顕著だったけれど、かみやまねきさんの「女の子はかわいい下着とフリフリの服を着てキラキラときめいてればいいんですよ!」的な原画とキャストはよかったと言える。

1

共通ルート、結衣からこれだけ拒否反応示されると辛い。他のヒロインたちもやや態度が硬い。寮の女の子の態度が軟化してきたかな、というあたりで個別ルートへ。このへん、もうちょっと穏やかな日常を過ごしてから各ヒロインとの仲を深めたかった。

2 結衣

日付表示画面、共通ルートでは気にならなかったんだけど、結衣ルートで結衣が捻挫して以降、ショートエピソード→日付表示→ショートエピソード→日付表示……って感じでぶつ切り感が出ちゃうのが難だった。
つい口をついて出てしまった恵の告白はよかったけど、結衣がおずおずと「……私、面倒くさいよ?」って言ったところで思わず笑ってしまった。知ってるよ! 散々見てきたからわかってるよ! お前が面倒くさいってことは! 恵も「知ってる」「わかってる」「それも含めて好きなんだ」という主旨のことを言っててシンクロ感ましまし。
あと、エロゲに出てくる男嫌い系ヒロインは、その男嫌いの原因が大概しょーもないと思うんです。これってトリビアになりませんか?
たくし上げ、いいよね。全体的に光の表現はかみやまねき氏のよさが出ていて満足した。シーン3で身体に浮かんだ玉のような汗はいまいち。性的興奮を喚起する液体描写って難しいね。

3 英理歌

かみやまねき氏が描く女の子の下腹部には神が宿っている。お腹出して寝てる絵が好き。
英理歌ルートは結衣ルートにも増して日付表示によるぶつ切り感がひどかった。
恵が英理歌と夜に寮の屋上で会話する間柄になった後、夜に寮の屋上で会話→日付表示→夜に寮の屋上で会話→日付表示→夜に寮の屋上で会話→日付表示→夜に寮の屋上で会話→日付表示→夜に寮の屋上で会話……という流れを見て、「ああ、これは日付表示で区切り入れないと延々屋上で会話するシーンが続いてしまうもんな」と納得……できるわけがなかった。
何が問題って、これらの会話シーンで一枚絵が使いまわされてるところ。会話の内容は漸進しているものの、絵的な変わり映えのなさが退屈だった。ゲーム内時間で約半月の間、ほぼ毎日表示されるイベントCGに描かれた満月が全く欠けないのは笑いを誘う。同じ満月の日を繰り返すループゲーかと思った。
前作もそういう節があったけど、素材作成を惜しんだ、あるいは素材運用がぎこちないせいで背景や場面がうまく切り替わっていないところがあり、残念だ。今作は前作に比べれば少しは素材があるんだから、夜の屋上だけじゃなくていろんなところで英理歌とおしゃべりしたかった。月の話とか、"遠く"についての話はよかったから、屋上でのイベントCG使用はここぞというときだけに絞った方がより印象的になったのでは。

月の話

英理歌「あたしは、いつもお月さまがキレイだと思ってるんだよねぇ…」
恵「へー、そうなのか」
恵「月が雲に隠れてる時でもか?」
英理歌「うん。それはそれでいいじゃない」
恵「いいって…。だって肝心の月が隠れてるんだぞ? キレイとは言えないだろ?」
英理歌「そんな事無いよ」
恵「そうか?」
英理歌「隠れてるんだけど、雲の向こうで光ってるのがわかる、って事あるじゃん?」
薄雲がかかってる時なんか、そう見える事もあるな。
英理歌「そんな時に、お月さまってすごいなぁ、キレイだなぁ、って思うんだよね」
恵「ほう」
英理歌「だって、お月さまって太陽みたいに自分で光ってるワケじゃないでしょ?」
恵「ああ。月は太陽の光を反射してるだけだからな」
英理歌「自分で輝けないのに、"ここにいるよー"って精一杯主張してると思うんだー」
英理歌「そこがすごくがんばってる、って感じがして好き」
英理歌「だからあたしは、いつだって、お月さまがキレイだって思うんだ」

"遠く"の話

英理歌「誰もいない"遠く"って嬉しいかな?」
[…]
英理歌「私は遠いところに着いたら…」
英理歌「その国の言葉で、『よく来たね』って褒めてもらいたいかな」
[…]
コイツはあくまで人の中に居たいのか。

この娘のビジョンはわりと好きなんだけど、隣に立って同じ視点を獲得するまでがなかなか難儀である。

4 優香

僕たちはキャラクターの表情を目で確認してるところが多分にあるから、手で顔をおおった優香さんの立ち絵は表情読み取れなくてちょっとした恐怖だね。
かみやまねき氏の描く下着には神が宿(ry
エンディング、他の社員からしたら恵はコネ入社した社長の愛人なので相当白い目で見られるのでは……

5 澪

この学校の女子制服、ニットかと思うくらいウエストラインがくっきりと出て非常によい。着る者を選びすぎである。
恵はどのルートでも優香さんに料理を教わってるけど、澪ルートの場合は彼女と一緒に覚えるところがいいね。澪が成長していくところを見守るのが楽しい。
このゲームでは個別ルートに入ってからもルートヒロイン以外の女の子のエピソードが挿入される。それはいいんだけど、そのエピソードがルートヒロインにまるっきり関係ないものなのはいただけない。本当にアリバイ(ルートヒロイン以外のヒロインがフェードアウトしてしまうことの解消)作りのためだけにやってるなら、もうちょっと自然に入れてあげてほしい。

6 シェーア

剣道経験者としていろいろ言いたいことはあるが、マジレスしていいものかどうか。つーか試合描写オールカットしてモノローグで回想て。さすがに1回戦から準決勝までの試合の流れをテキストで説明しただけでは臨場感に欠ける。
終盤、トランクを持って駅のホームに佇むシェーアは存在が儚げでぐっとくる。

7 誤字・脱字・誤訳など

パッチ当てたにも関わらず誤字が多い。
結衣とのHシーン1で"説明は要領よく、関係に願います!"の関係は簡潔の間違い。
その後の会話シーンで"「ちょっと、早くしてよ。体制が辛いじゃない〜!」"の体制は体勢だよね。
シェーアルートで"試合には、その人の正確が如実に現れる。"の正確→性格。このレベルの変換ミスがちょくちょく出てくるから困る。
かぎ括弧内の文末に句点があったり(他のかぎ括弧ではないのでそこだけ禁則処理が統一されてない)、助詞が間違ってたり。
英理歌ルートエンディングテキストに脱字あり。
さらには誤訳もあった。えーと、シェーアの台詞でムッターに「とうさま」、ファーターに「かあさま」とルビが振ってあるけど、ドイツ語で父はVater、母はMutterなんだよね。せめて辞書くらいはまともに引いていただきたい。例えドイツ語に詳しくなくても英語のファーザー・マザーの音を考えればなんとなくファーターの方が父親かな、と気付きそうなものだが。あるいは気付いた頃にはボイス収録終わってたか。
総じて一回読み返したかも怪しいくらいテキストの誤字チェックが甘い。個別に入ったあとも共通するイベントとかあるし、シナリオ容量はそれほど巨大ではないはずなんだけど。

8 総評

どのヒロインも光るものを持っていただけに、それをゲーム内で輝かせることができなかったことがいたく悲しい。
ゲームというのは限られた時間・予算の中で有形無形の制約に縛られながら、用意できた素材(絵・音など)を組み上げて作られる。素材は有限だから、単純に組み合わせただけでは遊んでいて違和感を覚えるような隙間ができてしまう。それを埋めるのがシナリオ・テキストライティングだろう。
そのような観点から見ると、本作は少し素材が足りていなかったかもしれないが、その不足は決して補いきれないほどのものではなかったはずだ。端的に、この作品はイベント構成とテキストライティングで素材の間隙を補足することに失敗している。結衣ルート・英理歌ルートで感じたシーンのぶつ切りやマンネリ配置、シェーアルートにおける剣道試合イベントのすっ飛ばしなどがこれにあたる。
アンケハガキに「Aileにどのようなゲームを期待しますか?」とあったので詳述しよう。
まずは有限の素材を組み合わせてあたかも無限であるかのように見せる技量をメーカーにはストックしてほしい。つまりシナリオ・テキストライティングで誤魔化す方法を磨いたらどうか、それが可能な人材を獲得してはどうかということだ。不足を不足として提示するのはあまりにみすぼらしい。
また、構成や文章によって作品をフォローするような力を育てられないなら、いっそ素材そのものを増やしていく方向へ舵を取るのもいいだろう。補足する必要もないくらい絵で語る・音で伝えるといったことができるのならば、テキストなんかはある程度手を抜いても致命傷にはならない。例えばかみやまねきさんの絵であればこれ以上質を上げるのは難しいだろうから、数を潤沢に揃えてみるとかね。多分テキストライティングでなんとかした方が安く済むと思うけど。
どちらにしろ、原画以外のどこにリソースを割いたのかちょっとよくわからない本作よりはよくなるだろう。フルプライスのゲームを作ることに息切れするような体力しかないのなら、ミドルプライスにしたりヒロインを3人にしたりすることで開発規模を小さくし、その分丁寧に作ってみるという方法もある。
プロダクトとしてのエロゲ語りって普段しないし得意でもないんだけど、この作品は一つの製品としてあまりに瑕疵が多いから、そういうことを考えざるを得なかった。

FriendsFriends

Aile 2012-03-23
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools