漫画「ベターガールズ」 感想

そんなわけで。椋蔵作のR18Web漫画「ベターガールズ」を読んだ。
クラグラ
おっぱいがとても柔らかそうに描かれていて好ましい。以下はおっぱい以外の話。
僕(たち)は美少女に肯定されずには生きていけない。
最終話で描かれたのは、"人間嫌いで妄想少年の上ヒネクレ者"である主人公灰次が"たからもの"を手にした時の不安だった。その不安を昇華する、「そうかもよ?」から最後のHシーンに突入して「だいじょうぶ」に至る流れが素晴らしい。そう、僕(たち)は女の子に「大丈夫」と言ってほしいんだ。それなんて「秒速5センチメートル」?
明里が「あなたはきっと大丈夫」と言ったから、貴樹がその言葉を物語として昇華したから、彼が本当に大丈夫になるのが「秒速」だった。そこで重要なのが、自意識による出来事の物語化だ。*1そうやって一度自分で作り上げた物語を経由しなければ前へと進んでいけないのが僕(たち)の弱さなんだよなー と本作を読んでいて改めて思った。
僕としては、物語化に際して他者の言葉をきっかけとする「秒速」の方が好みではある。前述した本作の物語化(「そうかもよ?」〜「だいじょうぶ」)は主人公の頭の中でだけ起こった事のように見えるから、少し強度が足りない。*2
それでも、全十話のストーリーを経て前進していく灰次達の姿は輝いて見える。タイトルに含まれた「ベター」という語は、よりよい繋がりを求めて変り続けていく彼らの意志を表した、とても力強い言葉だ。安心して終わりのページを閉じることができた。
あと、朱梨菜が言う「私 大切なのは『繋がる』事じゃなくて『繋がろうとする』事だと思うんだ…」という台詞から、昨年執筆したタカヒロ論の一節を思い出したりした。

美少女ゲームのプレイヤーとキャラクターが同一化するにあたって何より貴いのは、同一化しているという状態ではなく、同一化できるという可能性でもなく、同一化したいと望む気持ちである。
 
(highcampus「憧れのあとさき」/「恋愛ゲームシナリオライタ論集2 +10人10説」所収、theoria、2010年)

それにしても、藍姉とももちゃんが文字通り体を張って朱梨菜を守るシーンは熱いよなあ。登場したての時は自分の趣味に合わないかな、と思ったけれど、最終話まで読んだ頃には藍姉が好きになっていた。
ラストシーンのキスが、なんとも小気味よい。

*1:そのように読むと、「秒速」は第一部で一度終わっていて、自意識によって再構成されるのが第三部であり、第二部はそこに至る過程を描いている、と理解することができる。

*2:最後のHシーンが実際にあったかのような台詞が出てくるものの、メタいネタとの区別がつかないので保留。