ゲーム「Kanon」 感想

Ver 1.01(2010-07-31 1:40) 余談の文章、リンクを一部修正

そんなわけで。1999年にKeyから発売された「Kanon」を2010年夏にプレイしてみた。なんで「Kanon」って話からするとね、僕はそもそも今年の夏に「AIR」がやりたいなーと思ってるんだよ。で、時系列的に古いゲームからやった方が絵やシステムの進化とかも味わえるし、まず先に「Kanon」からやろうかなと思ったわけ。*1
プレイ実況はTwitterでやっていたので、それをまとめる感じで感想を書いていく。
Togetter - 「Kanonプレイ実況・感想つぶやきまとめ」

システム

ダメなところ

音量がWindows依存、音楽がCD-DA*2、ホイールでテキストが送れない、テキストの禁則処理ができてない、バックログなし、選択肢がテキストウインドウに出るからクリック連打してるとつい押しちゃう、セーブスロットが少ない、というのが主に難点だった。最近のゲームに慣れちゃってるとなかなかきつい。それでもやってるうちに順応していったので、最終的にはバックログ以外はほとんど気にならずにプレイすることができた。
バックログがないために、テキストをかなり意識的に読まないといけなかった。このゲームは日常シーンの会話が長いので、ついついクリック連打しちゃうんだけど、時々重要なワードが発話の中に含まれることがある。そういう時にバックログがないのが致命的だったな。セーブスロット少ないわりに選択肢多いからこまめなセーブも難しいし。スキップが早いからまだ助かった。

良いところ

何故かフォント設定だけ充実していて、文字の太さまで段階的に調整できる。2010年のゲームでも、フォントがいじれないシステム使ってることがあるし、ここは素直に褒めておきたい。ちなみにフォントはSH G30-M、太さは一番細いのから数えて二つめにした。

画面

画面に表示される立ち絵が常に一人分しかないことと、一つ一つの会話が長いところから、独特の没入感があったように思う。

個別ルート評

真琴→名雪→栞→舞→あゆの順に攻略していった。ほとんど攻略サイトなどは見ずにプレイした。今振り返っても、この順番で良かったと思うし、他人に推奨する時もこんな感じかな。

真琴

ジャブ程度の感覚で進めてたら、ボディに重い一撃が入ってのっけからダウンしかけた。予想してたより良いシナリオだった。ゲーム序盤ではこの娘の悪戯にけっこう苛つくこともあったけど、その幼児性を掘り下げる感じで話が進んでいったので納得したという感じ。終盤、部屋の背景CGで真琴がベッドに入っているところが描かれるのが印象的だった。あとウェディングベールの絵が気に入った。壁紙にしたいくらい。

名雪

語られていない部分はあゆルートで相互補完しますよ、というのが露骨に出ていて、そういう意味ではあゆに対するかませ感がした。お話自体は普通に良かった。
名雪については、糸目の寝顔が印象的だった。普通、萌え絵って目が大きいから、まぶたを閉じた際に顔のバランスがどうしてもおかしくなると思うんだけど、名雪の顔はそういう言説を通り越した勢いがあった。

この娘のルートが一番好きかな。ギミックがしっかりしていた良シナリオだった。
「最後の一週間」に入った時、物語の緊張感が一気に増す。それに合わせて、栞の制服姿の立ち絵が初めて出てくるんだよね。プレイヤーとしては「おお! 制服姿ktkr!」って嬉しくなるんだけど、物語的にはそうも言ってられなくて、そのへんの悲喜こもごもな雰囲気を作るのが巧いなーと感心した。
あともう一つは、Hシーンでベッドに敷いたストール。CGの中でかなり印象的に使われいたあれが、実は香織からもらったものであることを後で聞かされる、というところ。それを聞かされると、どうしても「えっ」ってHシーンを振り返らざるを得ないんだよね。「やべ、オレあの時ストールを雑に扱ってなかったかな」とか「あれを敷いた上でセックスしていた栞はどんな気持ちだったんだろう」とか思っちゃうわけ。Hシーンを単なるHシーンにさせないところが素晴らしい。Hシーンとシナリオの融和はエロゲにおける課題の一つだけど、このルートはそれをかなり巧くやっている。
このようなギミックの妙が栞ルートを高評価する要因だ。もちろん栞がかわいいことは大前提である。

このルートはすごかった。「美少女ゲームの臨界点」で前評判は聞いてたんだけど、実際プレイしてみると予想通りかそれ以上の不思議な感覚を味わえた。
最初はこのルート(サブヒロインの佐祐理が絡んでくるから)ごちゃごちゃしてんなーと思っていて、そこまで高い評価はしていなかった。夜な夜な校舎に忍び込んで魔物と戦うということについても、反復性を楽しみこそすれ、めちゃくちゃ面白いわけではないし。それが終盤になると、畳みかけるようなビジュアル面からの攻めを見せる。黄金の麦畑とか僕の琴線を刺激しまくりで非常に良かった。
他人のKanonレビューはあまり見ていないんだけど、多分好きな人はとことんこのルート好きなんだろうなーと思う。僕も栞ルートと一、二を争う感じで舞ルートが好きだ。

あゆ

正直言ってそこまで好きではない。ラストのあゆのビジュアルが好みじゃなかったりして。
ただ、「うぐぅ」をシリアスなシーンでも使うのは驚いた。そこまで筋を通すのは偉い。
あと、そこまで重要じゃないんだけど、舞ルートとキーアイテムがかぶってるのはいかがなものか。舞ルートでカチューシャ見たあとにあゆルートでもカチューシャが回想で出てきて、なんだかなーって感じがした。単に祐一がカチューシャ好きなだけかもしれないけど、普通キーアイテムはキャラごとに分けるだろ。せめてどっちかリボンでいいじゃん。このへん複数ライター制の弊害だと思わなくもない。

その他

Kanonにおける季節や色について。
夏ゲーが夏だけを扱う印象があるのに対して、冬ゲーには冬の次に来る春を意識している印象がある。冬は冬であると同時に「春の前」という意味も持っている。冬から春へ、終わりから始まりへ、絶望から希望へといったイメージはKanonにおいても自覚的に使われている。ゲーム開始時にはKeyブランドロゴに合わせて雪が降るのに対して、個別ルートクリア後の画面では、桜が舞うようになっている。
このゲームでは白、赤、ピンクがテーマカラーだと思った。Kanonは冬ゲーなので、当然ゲーム全体を通して雪の白色が積極的に使われている。そして、あゆルートで、他ルートで印象的だった夕焼けの赤色が何を意味していたのかが明かされる。そして、この白と赤を混ぜることでピンクになるのかな、と。ピンクはもちろん前述の桜の色である。*3

総評

物語として面白かったの一言に尽きる。改めて思ったのが、2chbbspinkでよく見られる「泣きゲー(笑)」「奇跡(笑)」「キャラが発達障害(笑)」等の意見は全然参考にならねーなー、ということ。やってないか読めてないかのどっちかだろ……常識的に考えて……
あと「ヒロインが現実の女性から遠い(ので悪い)」という言説は、「ヒロインを現実女性に近づけることで物語が面白くなるの?」で封殺……できるよね? 自信ないけど、感覚的にはそんなもんで、Kanonは物語としてとても面白かったし、そこに生きるキャラが現実の女性から遠いとか近いとかどうでもいいなーって感じ。

余談

さて、Kanonをオールクリアしたので、やっとKanon問題にコミット可能になったんだけど、僕に言えることなんてほぼ何もないだろう。あれは終わった話(参考リンクがまとめられていて、それを読み込まない限りうかつなことを言うべきではないという意味)だと認識している。
とりあえずプレイ終了後にASTATINE:「Kanon」評。9791さんのKanonの感想を読んだ。9791さんは僕が好きなレビュアーの一人で、上記のKanonレビューも面白く読ませてもらった。奇跡関連についてツッコミはされているけれども(Togetter - 「奇跡をめぐって、他(Kanon問題[2010])」今木さん(_imaki)のKanonレビューby9791に関するつぶやき - 響きやがて - はてなグループ::ついったー部)、全体的には好きなレビューだ。僕もこれくらいのレベルの文章が書きたい。

*1:それを言うなら「MOON.」「ONE〜輝く季節へ〜」からやれって話ではある。ONEは現在DL販売もしてるから、昔に比べれば入手は容易になっているし。ただ、今はそこまで辿る気はない

*2:_inmmで対応可

*3:タイトルロゴにもピンク入ってるしね。青は雪(水)の色で白と同義だと解釈