そろそろ発想力(笑)とか地頭力(笑)とかについて一言言っとくか

はじめに

 今日のクローズアップ現代のテーマが地頭力だった。
 新卒採用において学生に求める能力であり、なんでも0から1を生み出す力のことらしい(これはあくまで番組中のある会社が言っている定義のようだけど)。「0から1を生み出す」っていうところにカチンときたので、だらだらエントリかくはめになった。要点は三つ。
 ・0から1を生み出せるわけ無いだろ
 ・でもクリエイティブ職は0から1を生み出せるのか?
 ・まあ僕は1と1をつなぐ過程の方に魅力を感じるけどね

0から1を生み出せるわけ無いだろ

 結論からいうと、どんな独創的なアイデアも、既存のものからしか生まれない。
 このことはもう1988年にジェームス・W・ヤングという人が「アイデアのつくり方」という本で言い尽くしたことなので、21世紀には常識かと思っていたんだけど、どうやらあまり認識されていないようだ。もう一度引用して繰り返す。

 アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないということである。

 なんでもそう。ファッションでもそう。服のことがなにもわからないなら、最初から個性的な服を探すのはやめよう。まずは人とかぶっても模倣してもいいから、俗にいう脱オタファッションをすればいい。あたりさわりの無いスタイルを形作って、そこからできるだけ何も足さず何も引かぬよう心がけ、少しずつ独自性を出していくのが賢明な方法だろう。

 また剣道用語、というか古来から日本に伝わる熟語で言うなら、それは「守破離(しゅはり)」だ。師の教えを守り、次に破り、そして最終的には教えそのものから離れる。この「離」の部分を上記のヤングの考えになぞらえれば、「新しいアイデア」となる。
 余談だが、つめこみ教育が肯定される理由もここにある。つめこみをしないで、一体どこから発想の元となる材料を仕入れてくるんだよ。何も入れない脳みそからは何も生まれない。まあこんな当然のことは先人達がさんざん議論し尽くしたと思うのでここでは割愛する。

 以上のように、一見0から1を作っているように見える「発想」だか「地頭」だかも、結局は過去に自分の中に取り入れた要素を組み合わせることによってしか、つまり1から2や3を作るということでしか、不可能であることは明白だ。
 それにもかかわらず、番組内では新卒採用試験において、既存の要素を組み合わせたアイデアを発表した学生がアウトで、何か新しく見えるアイデアを発表した学生がセーフだったんだよね。ここで問題なのは、もちろん後者の学生のアイデアも既存の要素の組み合わせでしかないっていうことだ。結局、アイデアじゃなくて発表の仕方で採点してるんじゃないかと小一時間問い詰めたい

でもクリエイティブ職は0から1を生み出せるのか?

 しかしだ。ここで少し冷静になってみたい。
 実は前述の採用試験は、あるテーマでプログラムを組むという内容だった。僕はプログラムのことはよく分からない。せいぜいhtmlとcssを使ってW3Cに文句を言われないサイトを作る程度の能力しかない。
 もしかしたら、プログラムを作る、ということについては、前述のヤングの言っていたことは当たらないのかもしれない。プログラミング職やデザイン職は0から1を作る能力がある、ということかもしれない。いや、きっとそうだ。そうでなければ番組内で紹介された採用試験自体が成り立たない!
 …いや、言うまでもなく皮肉だよ。ただ自分が非クリエイティブだから、クリエイティブ職についてこうだと断言できないっていうだけであってね。

 プログラマやデザイナーが0から1を生み出せるというのは、僕の勝手な偏見、あこがれだ。僕は典型的な四大文系営業志望なので、技術職の類にはつけない。しかし、志望企業はデザイン職を抱えているところが多く、そういう人を見ると自分にも0から1を生む能力があれば、と思うことがある。はてなプログラマの人が「プログラマならコード書いてなんぼだろ」みたいなエントリ書いてるの見る度にかっこいーとか感じてしまうし。やっぱり心のどこかでは0から1を生み出せる能力をほしがっているのかもしれない。

まあ僕は1と1をつなぐ過程の方に魅力を感じるけどね

 見出し通り。今日行った会社の面接でもはっきり言ったよ。

 「私には0から1を作るといった類の能力はありません」
 「しかし、1と1を足したり、つないだりするという能力ならあります」
 就活を通して、自分にはどう考えてもこっちの方が向いているとつくづく思う。お客様が考えていることを聴き、要望を引き出し、自社のリソースから使えそうなものを引き出し、それを自分がつなぐ。やっぱりこの「つなぐ」という過程が魅力的でしょうがない。そんなわけで僕は営業を志望している。
 0から1を生むクリエイティブな職業の人からすれば、「つなぐ」人間って自分たちが作ったものをただ右から左へ楽して流してるだけに思うかもしれない。けれども、「つなぐ」人だって同じつなぐならしっかりとつなぎたいし、しっかりとつなぐためには多くの人とコミュニケーションを確実にとっていかないといけないよね。これってけっこう大変だしやりがいがあると思うんだ。この対人折衝を通して「つなぐ」プロセスこそが営業のすばらしさだと僕は考えている。

まとめ

 ・0から1を生み出せるわけ無いだろ、と基本的に僕は思う
 ・しかし、クリエイティブな職業では例外的に0から1が生み出せるのかもしれない(自分は非クリエイティブなので分からない)
 ・僕は1と1をつなぐ方が面白いと思う

 酔いながら書いたので若干意味不明かもしれない。あとクローズアップ現代自体も夕飯食べながら適当に見たので認識が間違ってるかもしれない。しかし、是非クリエイティブな職業に就いてる人に聞いてみたいね。本当に0から1を生み出すなんてことが、可能なのかを。じゃあ酔った勢いで唱えてみようかな。

 おしえて、ダンコーガイ

参考になるエントリ

企業が自頭力(じあたまりょく)を求め始めた…らしい - Catch the cow
 id:gunzyouさんのエントリ。実際の採用活動では、思考が違う人達を地頭力という一つの物差しだけで計っていいのか、という疑問。糸井重里さんも番組内で若干引いてたしねw
2008-04-03 - lionusの日記
 id:lionusさんのエントリ。スキルについての素晴らしい考察。こういうことも書きたいけど、このエントリに含めるとごっちゃになるので自重した。

 なんにせよ、番組を通して、時代が動くスピードが速すぎて企業も学生も不安になってんだなってことは分かった。

アイデアのつくり方

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