機動戦士ZガンダムIII -星の鼓動は愛- 感想

そんなわけで!
劇場版Ζガンダムレビューも今回で最後となります。
第三部星の鼓動は愛、きっちりかっちりまとめていきたいと思います。

死にゆく者たち

ストーリーはエゥーゴティターンズアクシズの三つどもえに展開していきます。敵味方入り乱れて、次々と宇宙に散っていく者たち。TV版のΖガンダムでは、たくさんの人が死んでいくというストーリーの陰鬱な部分が、その評価に若干の影を落とすことがありました。
アポリー、サラ、カツ、ヘンケン、ジェリド、レコア、エマ。
劇場版でなるたけ健やかな物語に生まれ変わろうとも、やはり人の死を見るのはつらいです。ジェリドの最期がTV版と微妙に違っていたのがポイントですかね。

「お調子…者が…」

カミーユのこの台詞は笑うところなのか? とも思いましたが、TV版のジェリドの台詞、

「お前は俺の…(全てを奪った)!」

が無かったのは、やはりというかなんというか。ジェリドは本当に哀しい男でした。
シロッコをかばって死んだサラ、エマを(戦艦で)かばって逝ったヘンケン、女を利用する男のありさまを訴えて散るレコアと、それに動揺しつつ、カミーユに生命を託して息を引き取るエマ。戦場に愛憎が渦巻く様を描くのが、やはり富野監督の真骨頂でしょうか。

モビルスーツ

第三部に入っても、敵のMSは続々と新機体が登場してきます。バイアラン、ポリノークサマーン、パラスアテネ。このへんは以前遊んでいたPS2用ゲーム「エゥーゴVSティターンズ」にも出てこないので、映像で観るのは初めてでした。バイアランなかなか強いですね。
最終局面では、ジ・オ、キュベレイバウンドドック、などが登場します。バウンドドックもかなり好きなんですけど、俺の中での一番がキュベレイです。やっぱり全MSの中で最も美しいのがキュベレイだと思うんですよ。その特異なフォルムで見る者の目を奪い、戦闘でのファンネル攻撃も凄くかっこいい。

ハマーン

キュベレイパイロット、ハマーン=カーンもΖガンダムを語る上では欠かせない人物です。TV版からその凛々しい声を演じている榊原良子さん自身も、ファンから「ハマーン様」と呼ばれるハマーンの人気には戸惑ったと聞いています。
ハマーンはかつての恋人であり、自分の元を去ったシャアとの確執がありますが、カミーユとの精神邂逅の際には、シャアとの幸せな過去を垣間見られて激昂します。

「土足で人の中にはいるな!」

ハマーンのシャアへの執着はとにかくすさまじい。何度も自分のもとに帰ってくるよう諭すわけですが、これがただのカリスマではないハマーンの魅力となっているように思います。

ラストバトル

物語の終盤、コロニーレーザー付近に残ったのはカミーユΖガンダム、シャアの百式ハマーンキュベレイシロッコのジ・オ。キュベレイとジ・オが百式を追い詰め、

「まだ終わらんよ!」

とシャアは劇場に逃げ込む。このあたりで三者三様の未来への構想が語られ、ここでもハマーンはシャアに帰順を促します。
そして再びキュベレイ百式、ジ・オ対Ζの構図がつくられますが、MSの性能の差もあって百式を追い込み、止めを刺す間際にも、もう一度だけ説得を試みるハマーン。気丈で冷酷なだけでない女性としてのハマーンが描かれています。
劇場版では、ハマーンが戦争終結アクシズをアステロイドベルトまで後退させ、TV版の「ZZ」には続かないストーリー展開となります。いわばパラレルな歴史ができてしまったわけですが、そっちの世界でハマーンがひっそりと幸せに生きていければいいなと思います。

ラストシーン

最後はカミーユシロッコの対決となりました。今回の一連のレビューでほとんどふれずじまいだったシロッコ。あんまり深く掘り下げる気にならなかったというのが正直なところです。昔はもうちょっと好きなキャラだったんだけどなあ。
富野監督がTV版とは違うラストを作るという言葉を残していたため、注目が集まっていたラストシーンに入ります。TV版では、ウェーブライダー形態のΖでジ・オに突撃し、シロッコを倒すものの、精神崩壊を起こしてしまうカミーユでした。
しかし、今回の劇場版ではなんとか持ちこたえ、ファ=ユイリィとの抱擁を交わすシーンでラストとなります。

「幻覚でもなければ意識だけの存在でもない、こうして抱くことができるんだから」

この言葉に、新訳Ζガンダムの健やかさを感じるのは早計でしょうか。ともすれば底の浅い精神論におちいってしまうガンダムのストーリーを、うまく肉体のある世界に落ち着かせた、良い結末であったと思います。
健全なる魂は健全なる精神と健全なる肉体に宿る。そんなことを考えさせられる物語でした。

三部作所感

最後に三部作全体を観ていて感じたことを書いていきます。
まず作画について、これはもう言い尽くされたことですから触れるだけです。TV版と新作の作画が混ぜてある構成は、確かに違和感がある箇所もありましたが、ガンダムΖガンダムを観たことがあるなら、特に問題ないと思います。逆にいうと、やっぱり初めてガンダムシリーズを観るならば、あまり本作はおすすめしませんね。
あとは、劇中の音楽が素晴らしいことも付け加えておきます。ゲームでもさんざん聴いていたのでその良さはわかっているつもりでしたが、やはり本編中で聴くとより緊張感が出ていてとても良かったです。Gacktの「Love Letter」がラストシーンで流れてくる演出も美しく、Ζガンダムが音楽面でも充実していることを再確認しました。
今回、いろいろと触れられなかった点がありましたが、レビューの中では作品全体にわたる評価をしながらも、自分が好きでこだわりたいところには多めの記述をしたつもりです。
劇場版と比較して、また小説版のレビューもやってみたいですね。ということで、劇場版新訳Ζガンダム三部作のレビューを終えたいと思います。

機動戦士ZガンダムIII -星の鼓動は愛-、宇宙を駆ける健やかな生命が、詩になるもの。