アニメ「トップをねらえ!」 感想

そんなわけで。先月から「トップをねらえ!」がYoutube等で無料配信されている。名前は知りつつも一度も観たことがなかったので、この機会に全話鑑賞した。

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岡田斗司夫

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これはまさしく名作だった。僕はこういうアニメが観たかったんだ。もうね、1話の鉄ゲタのシーンあたりでは笑っていられたけど、5話と最終話に至っては1時間泣きっぱなし、観終わった時には涙と鼻水で顔がべとべとだったよ。
以下の感想は少々ネタバレ気味。

いま・ここ

ここ数年、僕が物語を読解する時のテーマの一つが「いま・ここ」だ。これはけっこう曖昧な言葉で、使ってる自分自身でもまだその意味を限定しきれていない。当エントリでは、登場人物が生きる時代と場所、程度の意味で書いておく。
本作品では、ウラシマ効果により登場人物達の「いま・ここ」がズレていくところがストーリー上の大きなポイントとなる。
心を通わせた親友・戦友・恩師達と同じ時を過ごせない、というのはとても辛いことだ。それでも、自分が生きて戦う*1場所は「いま・ここ」にしかない。そして、自分の「いま・ここ」が他人のそれとは違うものになってしまっても、そこから逃げ出さずに戦うことで「同じ時を生き」ることができる。第5話はそれを圧倒的な熱量で伝えている。
ここまででも十分に名作の域に達しているけれど、さらに最終話では「いま・ここ」のズレに終止符を打つところまでを描いている。みんなが「同じ時を生き」られるようにするために、極限状況の中でノリコとカズミは一度ズレた二人の「いま・ここ」をリンクさせ、人類の「いま・ここ」を守ろうとする。それがどのような形で果たされるのか、未見の方は是非とも確かめていただきたい。僕は、主人公ロボガンバスターの勇姿に心打たれた、と言うに留めておく。

お気に入りキャラ

僕が特に好きなキャラはユング
彼女は最終話まで前線で戦い続け、ノリコと同じ時を過ごし、劇中で年を取った姿が描かれない。また、いろんなものをカズミに譲り、最後にはノリコと「いま・ここ」を共有する権利すら譲ってしまう。逆に言えば、その席を預かり守り通した。それをもって、二人にとって最高の戦友と言えるだろう。
もちろんビジュアル面も好き。素晴らしいスタイルだしね。川村万梨阿さんの声も素敵。ユングに限らずノリコやカズミも、気丈なパイロットからしおらしい女の子まで、多彩な感情が声で豊かに表現されていてグッド。
あと、近年ではなかなか見られない「ネタキャラじゃない若本規夫」が見られるのもこの作品の良いところだった。現代でもこういう起用をしてほしいもんだ。

自分が生きる「いま・ここ」を大切にしようとは思いつつ、最近の僕はそこにばかり目が行っていたように思う。このアニメを通して、他者の「いま・ここ」と自分のそれとをリンクさせるということの意味を改めて考え直すことができた。その点だけでも、僕にとっては忘れがたい貴重な作品だ。

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*1:生きることは戦うことだとすればトートロジーだな