母の笑い声

ひとしきりあって。
僕の記憶では、昔の母の笑い方は「笑っている」以外に解釈のしようがないものだった。ここ数年、母はまるで嗚咽するかのように肩を震わせて笑う。
時折、遠くに聴く母の笑い声が泣き声のように聞こえることがある。おそらくはテレビを観て笑っているのだろうが、それが果たして本当に笑い声なのか、それとも泣き声なのか、分からなくなる。
自分の気持ち次第で如何様にも聞こえるということは、時としてこんなに辛い。