ラノベ「ブギーポップは笑わない」 感想

そんなわけで。
2010年になってようやく「ブギーポップは笑わない」を手に取る機会があったので読んでみた。ラノベ読むのが久しかったのでちょいと難儀したけど、すぐ慣れた。

どうしようもない

読後感は「どうしようもない」。なんなんだろうね、この「どうしようもない」感じは。
本作の構成は、各話ごとに視点となる登場人物が変わっていくようになっている。よって、一人の視点からは出来事の全貌を知ることはできず、それが世界観の広さを形作っている。大体ここまでは読者の意見が一致すると思う。
で、僕が感じた「どうしようもない」っていうのは、その登場人物一人一人の「できることの少なさ」なんだろうなー と。「無力感」と言ってしまうとまた微妙に違う気がする。人間には、全力で懸命に生きても、行けない領域がある。懸命に生きる充実感で誤魔化してるけど、そういう領域への断ち切れない思いが、この物語の感傷なのかな、と思った。
同じ「どうしようもない」感じでも、村上春樹作品とはまた違った風で興味深い。村上春樹の「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」あたりの「どうしようもない」感じ。あれは、行き止まりというか未来がないというか、一応この先にも道は続いているけど、その道は虚無で塗りつぶされてる、みたいなものだった。
本作の「どうしようもない」感じは、「いま・ここ」を中心に、過去にも未来にも道は通じているけれども、その道が狭いっていうか細い、みたいなものだ。故に、他者の道と交錯する面積もやたらと狭く感じる。
さて、この「どうしようもない」感じを受けると、どうにも処理に困る。僕は「どうしようもない」感じからくる世界観の広さに酔えばいいのか? それとも自分が行けない領域を想って泣けばいいんだろうか。どうにもすっきりしない。そのすっきりしない気持ちが、本作がよくできた物語であることを証明している。

他の人のレビュー

ブギーポップ批評序説
深い考察だと思うものの、僕は本作以降のブギーポップシリーズを読んでいないのでなんとも言えない。こちらでも村上春樹の作品が考察の材料として出てくる。
他にも、これは読んでおけというレビューがあったら教えていただきたい。

ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))

ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))