ラノベ「ゴールデンタイム<1>春にしてブラックアウト」 感想

そんなわけで。

「だって多田くんが消えちゃったら、……今夜のみっともなかった私を、私たちを、秘密にしたいこんな夜を、一体どこの誰と分かち合えばいいのよ? 他にいないよ、この世にもどこにも、多田くんしかいないよ。いないじゃない」

例によって*1、彼らが語るそれは恋ではない。互いを忘れないという香子と万里の誓約はチキンレースじみている。そのあまりに凄絶な最期、"相手の心に自分の影を残して死ぬこと"から逃れる多分唯一の方法として恋は存在する。万里は恋に手を伸ばした。香子は去った。今はまだ。
いつか、秘密にしたいそんな夜を、僕はサンボマスターと分かち合った。
「キミはいたほうがいいよ」*2
ハロゲンヒーターにあたりながら、彼らが告げた言葉の意味を前歯の裏で転がした。

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*1:例=「とらドラ!

*2:サンボマスター4thアルバム「音楽の子供はみな歌う」のキャッチコピー。収録曲「I Love You」には、"君はいた方がいいよ"という一節がある。